笹久保伸個展「秩父前衛派」

笹久保伸個展「秩父前衛派」
会期:2016年4月20日(水)~4月26日(火) 13:00~20:00
オープニングレセプション:20日(水)18:00~

イベント:20日18:00より、笹久保伸+青木大輔=秩父前衛派によるライブパフォーマンスを開催
会場:素人の乱12号店(東京都杉並区高円寺駅北3-8-12 フデノビル2F)

「秩父前衛派 」プレスリリース


この度、高円寺にあります素人の乱12号店「ナオ ナカムラ」では、オープン5周年を記念し、笹久保伸個展「秩父前衛派」を開催いたします。

笹久保伸は1983年生まれ。幼少期を南米ペルーで過ごし帰国後、母親の郷里である埼玉県秩父市に引っ越します。アンデス音楽を聴いて育ち、その影響を受けた笹久保は9歳からギターを習いはじめ、高校を卒業後、2004年から4年間、単身でペルーへ渡ります。そこでは、フォークロアをリサーチして、音楽のバックグラウンドにある人々の生活と、音楽が生まれて音楽が生きる生の現場を体感します。フィールドワークしたそれらを素材にし、これまでにない彼独自の新しい音楽を生み出してきました。また、帰国後2008年より、秩父という土地のもつ根源的な“前衛性”にフォーカスし、作品へとアウトプットする芸術運動「秩父前衛派」をスタートします。

これまでに20を超えるCDをリリースし数々の賞を受賞するなど国内外で活躍する傍ら、演出家の飴屋法水氏と批評家の椹木野衣氏による戯曲『グランギニョル未来』(2014/ヨコハマ創造都市センター)への出演や、『山形国際ドキュメンタリー映画祭』(2015/山形市)の日本プログラムへ出品、そして、『イメージフォーラム・フェスティバル2016』にノミネートされ、現在は『瀬戸内国際芸術祭2016』の小豆島エリアにて作品を発表しています。また、今展は笹久保にとって3度目の個展であり、ナオナカムラでは初個展になります。

関東地方に属しながらも周囲が山々からなる盆地で“どんづまり”と呼ばれるほど閉鎖的な秩父には、年間400以上ものお祭りや34ヶ所観音霊場が存在し、日本最古の貨幣である和同開珎が生まれ、日本史上最大規模の民衆蜂起である秩父事件が起こるなど、さまざまな信仰と歴史文化が根深く混在しています。また秩父の人々は、絹織物産業とセメント産業により生活してきました。

しなやかで艶があり繊細な絹織物は蚕を育て蛹を殺して繭を紡ぎ、無機質で冷たいコンクリートの塊は神の山と崇められる武甲山を爆破してセメントを採掘します。そして蛹を殺して繭を紡ぐ音や、神の山を爆破してセメントを採掘する轟音のリズムは労働する人々の民謡となって受け継がれました。経済を求めた結果が生み出した破壊と残骸の轟音は今も絶えず鳴り響き神の山を崩壊へと導いています。

笹久保は、その土地で生きた人々が丹精を込めて築きあげた郷土的で前衛的な文化に寄り添い、自ら奏でる表現へとインプットとアウトプットを繰り返しているのではないでしょうか。

本展覧会では、シルクスクリーンで制作された「秩父前衛派・図形楽譜」や図形楽譜を石板に刻んだ「ダイナマイト・トラヴァース変奏曲」をはじめ、8ミリフィルムで撮影された映像作品や未発表の写真作品などで構成します。

その土地独自に根づくカルチャーを自らの足で確かめ、フィールドワークを通じて“あくまで客観的でメタフィジカルに”作品化する笹久保伸の個展をこの機会にどうぞご覧ください。