涌井智仁個展「蒼い優しさにだかれて」展



涌井智仁個展「蒼い優しさにだかれて」展


会期:2012年8月24日(金)25日(土)26日(日) 13:00~20:00
オープニングレセプション:24日(金)トークショー後
イベント:24日(日)18:00~、涌井智仁、卯城竜太(Chim↑Pom)トークショー。
会場:素人の乱12号店
協力:天才ハイスクール!!!!

 この度、高円寺にあります素人の乱12号店「ナオ ナカムラ」では、涌井智仁個展「蒼い優しさにだかれて」を開催いたします。

 涌井智仁は、1990年新潟県生まれ。2011年美学校の現代美術の講座を受講し、現在、多摩美術大学美術学部に在学中です。
 涌井は、立体音響やプログラミングを使った音楽作品をメインに、飛び出し注意の看板のパロディで男児のパンツから性器が飛び出している作品「飛び出し注意」や、防護服を纏った涌井が国会議事堂の前で“恥”と書いた作品「2011年『今年の漢字』」など制作してきました。そんな、見る側に笑いに誘う馬鹿馬鹿しい作品から、社会性の強く鋭い作品までさまざまなフィールドで発表し続けています。

 本展覧会では、“東京の中の自分≒自分の中の自分”をコンセプトに、音楽をはじめ、絵画、立体、映像などさまざまな作品で構成します。私たちは、場所に応じて都合よく自らのアイコンを変えますが、本当の“私”はどこに存在しているのでしょうか――。
周囲の影響を受ける“私”の好都合なアイコンは、自らを支配してコントロールします。また、周囲に影響を与える東京スカイツリーという戦後・資本主義の象徴は、人々を支配してコントロールするのです。お互いに、自らを喩え、象徴させるゲームのようにも感じます。

まるでアイドルのように多重人格化する未決定な自己の創生と過程、新しい想像力を駆使し、新しいスカイツリー・自己を創造していく涌井の初個展をどうぞご覧ください。

 また、24日のオープニングイベントには、ゲストといたしまして卯城竜太氏をお迎えしトークショーを開催いたします。

卯城竜太:社会的メッセージの強い作品で国内外問わず活躍し続けている6人組アート集団Chim↑Pomのメンバー。ideainkの第三弾として書籍「芸術実行犯」絶賛発売中


東北で起きた地震は、すぐに中越地震と繋がりました。
僕は、物凄いスピードで、剥き出しの中学3年生の身体に戻りました。
正確には、80%位戻りました。
久しぶりに出会った中学3年生の僕はとても白けていました。
無視し過ぎたようです。
そこから、僕は、自分が世界に都合良く分裂している事に気がつきました。
僕は僕のゲームから逃れるために、東京に来たようです。
それは無関心的に生きていると当然と起こる事のようです。
だから、スカイツリーには強い嫌悪感と、大学4年生の自分にまた戻されたようなげんなり感、ベタ感、白け感があります。
あぁこれが白けか、中3の自分がずっと繰り返し、耐えていた2005年のあの冷たさか、と冷静になりました。
スカイツリーは、中越地震から東北の地震まで僕が懲りずに続けていたゲームで、その嫡子、最後尾のゴールです。
僕は東北の地震が起きて、まだこのゲームを続ける無意味さには耐え切れません。 
それはとても怖い事だから。
東北の地震は戦後的想像力の極致点です。
しかし、元から僕らゆとり世代にはそんな想像力はありませんでした。
僕達はシミュラークル化された想像力を持ってここまで生きて来ました。
それは音楽ファンタジーゆめ、であり、アヘ顔ダブルピース、であり、バラエティ番組的なライフハッキングです。
あの垂直のゲームは、乗れば負けるゲームのようです。
もう一度中学3年生の自分に戻って、選択をしよう。
中越地震について、僕の想像力を持って考えてみよう。
東京を自由に歩き回る僕を捨てて、茫漠な可能性のノマドに還ろう。
これは再帰的な選択であり、ネットやテレビによる分裂した自分と向き合う事であり、2005年の亡骸に手を合わせ祈る行為です。
新潟の自分と川西町の自分と長岡の自分と橋本の自分と渋谷の自分と御茶ノ水の自分と新宿の自分とネットの自分と2005年の自分と、ああ、ここで色々巡ってる。 この巡ってる自分について考える。それは無理な事だ。
僕は色んな僕がいつも意識している僕にはなれないんだけど、
いる事は分かってるし、それが僕だって事も分かるんだが、
それは沼だ、沼のようなべちょべちょの未決定な僕だ。
それが実はアイドルだったりしたらとても嬉しいんだが。それはもうちょっと先の話。 

涌井智仁